内容証明郵便の基礎知識

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内容証明郵便とは?

郵便法第63条は「内容証明の取扱いにおいては、公社において、当該郵便物の内容たる文書の内容を証明する。」と規定されています。すなわち、どのような内容の文書を出したかを日本郵政公社に証明してもらえる制度であり、この制度を利用した郵便物が内容証明郵便なのです。

内容証明郵便は郵便物である文書の内容が公的に証明され、差出日も証明されますが、その他の法的効果はなく、普通の郵便物となんら変わりありません。また、内容証明郵便で行われる文書の内容の証明とは、「AさんからBさん宛てに、これこれこのような内容の文書が郵送されました。」ということを証明するだけであって、文書に書かれた事実等(Ex.債権の存在等)を証明するものではありません

相手方に通知をしたり請求したりすることは法律上、重要な効果を生じることが少なくありません。その際、口頭での請求や普通の郵便物での請求では、いざ裁判となった時に相手方に「請求されていない」「そのような手紙は受け取っていない」と言われて争った場合、請求した事実を証明することは非常に困難です。その点、内容証明郵便を利用していれば郵政公社が証明を行ってくれるので、このような問題が起こる可能性は極めて低くなります。このように、内容証明郵便は裁判時に有力な証拠としての役割があるのです。

また、内容証明郵便は裁判時に有力な証拠となりうるので、次の段階として裁判を予定していることを伝えるという事実上の効果もあります。

内容証明郵便の注意点

内容証明郵便は差出人の強い意思表示を表すもので、裁判となった場合の有力な証拠となり得るものですから、その作成・提出には細心の注意を払い、冷静な対処をする必要があります。

冷静な判断ができない状態だと、内容証明郵便の作成・提出にも細心の注意を払うこともできず、勢い余って脅迫や恐喝じみた文章を書いてしまうおそれがあります。そうすると、相手方から逆に訴えられてしまう危険性がありますので、内容証明郵便を取り扱う時は、第一に冷静な対処が必要です。

内容証明郵便を出さない方がよい場合

何らかの意思表示を行う場合、すべて内容証明郵便を利用すれば良いというわけではありません。上述のように内容証明郵便は裁判となった場合に有力な証拠となりうるものであり、受け取った人によっては気分を害して問題がこじれてしまう場合があります。したがって、そのような場合は内容証明郵便ではなく、普通の手紙による意思表示の方が効果的ということが少なくありません。

また、かかえている事案がその後訴訟等の深刻な問題に発展するようなことが予想される場合には、自ら内容証明郵便を出したりせずに、最初から弁護士等に相談したほうがよいでしょう。相談せずに内容証明郵便を出したがために、その後自分に不利な展開してしまうこともないとは言えません。

内容証明郵便を受け取った場合

逆に内容証明郵便を受け取った場合はどのように対処すればよいのでしょうか?これも作成・提出の場合と同じく、冷静に対処することが大切です。

例えば、お金を借りてもいないのに「金を返せ」という内容証明郵便を受け取った場合、何も回答しなくとも理論上はなんら問題とはなりません。ただし、その後裁判になった場合に「相手方の主張を認めたのだから特別に反論もしなかったのだろう」と判断されてしまう要因となりかねません。この場合、相手方から内容証明郵便を受け取った時点で「お金を借りた事実はない」などの内容証明郵便を出してれば、はじめから相手方の主張と争っていたことを証明することができます。

ただ、内容証明郵便を受け取った場合については、その時々、状況によって対応が異なりますので、内容証明郵便を受け取った時点で専門家に相談したほうがよいでしょう。

内容証明郵便の書き方

用紙

用紙の種類や大きさに制限はありません。通常、B4版・A4版・B5版程度の用紙を使用しますが、市販されている内容証明用紙のほか、コピー用紙、ワープロ用紙でも構いません。一般の人が手書きで書く場合、市販の内容証明用紙が便利でしょう。これはあらかじめ行数・字数制限に則ったマス目が引かれているので、行数や字数を気にすることなく書くことができます。また、筆記用具にも制限はありませんが、容易に消したり、改ざんができる鉛筆は不適切です。手書きの場合、カーボン紙を使って複数枚作成することが多いので、ボールペンが一番適しています。

行数・字数

縦書きの場合、1行20字以内、1枚26行以内で作成しなければなりません。横書きの場合は、1行13字以内、1枚40行以内で作成、または1行26字以内、1枚20行以内で作成することができます。

==行数・字数の計算方法==

  • 記号は原則1個1字として計算します。(㎡など2文字分として扱われるものもあります。)
  • 括弧は上下(または左右)をもって1字とし、上(または左)の括弧の属する業の字数に参入します。
  • 割書きは1行に記載されたものとして計算します。
  • 郵便局で記入(スタンプ)する証明文は行数・字数に参入しません。
  • 付記・添付・連記は行数・字数に参入しません。
  • 文字または記号の訂正・挿入・削除についての字数及び箇所の欄外又は末尾への記載は、行数・字数に参入しません。
  • 文書の欄外の印刷部分は行数・字数に参入しません。

使用できる文字

  • 仮名(ひらがな・カタカナ)
  • 漢字
  • 数字
  • 英字(固有名詞に限る)
  • 括弧
  • 句読点
  • その他一般に記号として使用されるもの

文字等の訂正等

文字や記号を挿入・削除・訂正するときはその字数と箇所を欄外または末尾の余白に記載して押印しなければなりません。文字を挿入するときは挿入する場所に、挿入記号(Vなど)を使って文字を挿入し、欄外に「加入○字」と書いて押印します。また、文字を削除する時はその削除する文字に二重の訂正線を入れて削除し、欄外に「削除○字」と書いて押印します。最後に、文字の訂正をする場合は二重の訂正線を入れ文字を削除した後、削除箇所の脇に訂正した文字を書き加えます。そして欄外に「削除○字、加入○字」と書き押印して訂正します。

欄外に記載する場合は挿入・削除・訂正した箇所を記載する必要はありませんが、文章の末尾の余白に記載する場合は、挿入・削除・訂正の字数に加えて、箇所についても「△行目○字削除」のように記載してください。

挿入・削除・訂正例

氏名・住所・年月日の記載

文書中には必ず差出人の住所・氏名、受取人の住所・氏名及び年月日を記載しなければなりません。縦書きの場合は、文書の末尾に年月日、差出人の住所・氏名、受取人の住所・氏名(法人の場合は住所・法人名・代表者名)、の順に記載するのが通例です。また、横書きの場合は、文書の冒頭に年月日、受取人の住所・氏名(法人の場合は、住所・法人名・代表者名)、差出人の住所・氏名の順に記載するのが通例です。

捺印・契印

差出人の氏名の下(横書きの場合は右)に捺印をするのが通例です。規則上要求されてはいませんが、正式な文書であることを示すために捺印してください。捺印は実印の必要はなく、認印で構いません。また、文書が2枚以上になる場合はその綴り目に差出人の印で契印(割り印)をしなければなりません。

契印例

契印例

作成通数

内容証明郵便の作成通数は郵便物の内容である文書のほか、2通の謄本(同一内容の写し)が必要です。例えば、送る相手が1人の場合、相手方に送る文書、郵便局で保管する文書、差出人が保管する文書の計3通が必要となり、また、同一内容の文書を2人に送る場合、相手方に送る文書、もう一人の相手方に送る文書、郵便局で保管する文書、差出人が保管する文書の計4通が必要となります。作成通数は、以下のような式で計算ができます。

作成通数=(差出人数)+2

手書きの場合はノーカーボンの内容証明用紙などを使うと便利ですし、1通だけ作成して残りはコピーでも構いません。パソコンを使うときは必要な通数をプリントアウトすればよいでしょう。

同封できない文書

①内容を記載した文書以外の文書、②図画・返信用封筒・その他の物品、③為替証書・小切手・手形・その他有価証券は同封できません。基本的に作成した文書だけしか送れないと考えてください。

内容証明郵便作成時のポイント

一般の手紙では手紙の本文の前に「拝啓」「前略」などの頭語や時候の挨拶などを書くことが多いのですが、内容証明郵便ではあまり書くことはありません。その代わり、「通知書」「催告書」などのように表題をつけることが多くあります。これはその文書の趣旨が明確になり、後で文書を特定する上でも便利ですのでつけた方がよいでしょう。また、頭語や時候の挨拶と同様、末文や結語も必要ありません。

さて、内容証明郵便を作成する際に気をつけなければならないことは、まず第一に簡潔に書くということです。枚数制限はありませんが、文章が長くなると、後述のように料金が高くなってしまいます。しかも、文章が長くなってしまうと、どうしても焦点がぼけてしまいがちです。

第二に、明確でわかりやすい文章を書くことです。詳しい事情やいきさつが書かれているが、結局何が言いたいのかわからない文章では、内容証明郵便にする意味がありません。
以上の点を踏まえて内容証明郵便をクーリングオフの意思表示に使用する場合のポイントをまとめてみました。

クーリングオフの意思表示を内容証明郵便で行う場合は、その本文に①クーリングオフの対象②法的根拠③解除の意思表示の3点を記載した方がよいでしょう。ただし、②法的根拠は、わからない場合やあやふやな場合は無理をして記載する必要ありません。

また、クーリングオフの理由は必要ありません。法律でクーリングオフができると定められている以上、要件を満たしさえすれば当然に契約解除ができるのですから、あえて記載する必要はありません。

クーリングオフの対象(いつ、どのような契約か?)

まず、どのような契約に対してクーリングオフを行うのか明示しなければなりません。具体的な記載事項は①日付金額商品名の3つです。クーリングオフの対象を特定しなければ、何に対するクーリングオフかが相手方に伝わらず、クーリングオフができない場合があるので、正確に記載する必要があります。

法的根拠

クーリングオフは法律で定められた制度ですから、「特定商取引に関する法律第9条の規定に基づき~」などのように、その根拠条文を示すとより効果的でしょう。

解除の意思表示

クーリングオフという契約の解除を行うのですから、「~の契約を解除いたします。」とはっきり記載する必要があります。あいまいな表現をすると相手方に自分は何をしたいのか伝わらないので、はっきりと「解除いたします。」と記載してください。

最後に、感情的な文章を書かないことです。文章が感情的になってしまうと、文章が冗長になり、意味不明な文章になりがちです。また、文章の調子が強くなりすぎてしまい、相手方から逆に恐喝等で訴えられかねません。自分の書いた内容証明郵便で損害が発生してしまっては元も子もありませんから、あまり感情に走らない、冷静な表現方法を心がけるべきでしょう。

内容証明郵便の提出方法

提出先

内容証明郵便を取り扱う郵便局は郵便物の集配事務を行う郵便局か地方郵政局長の指定した郵便局に限られます。(街の小さな郵便局では取り扱われていない場合が多いようです。)

持参するもの

  • 内容証明郵便・必要通数:作成した内容証明郵便及び謄本2通。(同一内容の文書を複数の受取人に宛てる場合はその人数分の謄本が必要です。)
  • 差出人・受取人の住所・氏名を記載した封筒:封筒は封をせずに郵便局までご持参ください。
  • 印鑑:郵便局で訂正の指摘を受けた時や契印漏れの際に使用する場合があるので必ずご持参ください
  • 所定の手数料

配達証明

内容証明郵便はその文書が差し出されたこと及びその時期の証明にはなりますが、受取人に到達したこと、すなわち、その郵便が配達されたことは証明してくれません。そこで、内容証明郵便を出す際には同時に配達証明をつけるのが通例です。

配達証明がなければ、受取人に「そのような郵便物は受け取っていない」と言われてもそれを覆す証拠がなく、実際上内容証明を利用した意味がほとんど無意味になってしまいますので、内容証明郵便を出すときには配達証明を必ずつけてください

手数料

  • 内容証明料金:文書1枚につき420円、1枚増えるごとに250円加算
  • 書留料金:420円(損害賠償額10,000円まで)
  • 通常郵便料金:80円(25gまでの定形郵便物)
  • 配達証明料金:300円(差出時)、420円(差出後)
  • 速達料金(希望すれば):270円(250gまでの通常郵便物)

※内容証明郵便・配達記録郵便は書留にした場合のみ取扱う事とされているため、書留料金が必要となります。

内容証明郵便に関する手数料は以上のようになっています。ですから、内容証明郵便を配達証明つきで出すには最低でも1,220円(420円+420円+80円+300円)が必要となります。

提出までの流れ

受取人に郵送する文書を作成したら、内容証明郵便を取り扱っている郵便局へその文書と必要な謄本を持参します。郵便物を窓口へ提出する際には必ず「内容証明郵便で、配達証明をつけてください」と申し出てください。

そのようにして郵便物を窓口へ提出すると、郵便局員が受取人に郵送する文書とその謄本を照合して、同一内容であるかどうか一字一句確認する作業が行われます。その際、訂正等があれば郵便局員の指示に従って行ってください。

同一内容であると認められると、受取人に郵送する文書と各謄本に差出年月日とその郵便物が内容証明郵便物として差し出された旨、および郵便局長名が記載されたスタンプを押し、さらに通信日付印が押印されます。この通信日付印は郵送する郵便物が2枚以上の場合はその綴目や訂正箇所にも押されます。また、受取人に郵送する文書と謄本に通信日付印で契印します。

郵便局では謄本のうち1通を保管し、残りの1通を差出人へ戻します。そして受取人に郵送する文書は郵便局の係員立合いのもと、差出人が封筒に納めて封かんをしたうえで郵便局員に提出し、郵送することとなります。その際、差出人に郵便物の受領証(郵便物受領証明書)を交付します。

以上で、内容証明郵便の提出に関する手続きは終了ですが、最後に受け取った郵便物受領証明書は謄本の再請求の際などのときに必要となりますので、大切に保管してください。

提出後

①配達証明書

配達証明をつけた場合は、郵便物が配達された後に、何月何日にそれを配達したか書かれたハガキ(配達証明書)が送られてきます。この配達証明書が相手方が郵便物を受け取ったという証拠となりますので大切に保管しておいてください。

②保管すべき書類

  • 内容証明郵便の謄本
  • 郵便物受領証
  • 配達証明書
  • その他関係書類(クーリングオフの際の契約書等)

※これらの書類はファイル等に入れ、1つにまとめて大切に保管してください。

③謄本の閲覧等

内容証明郵便の差出人は謄本の保存期間である5年間に限り、差出郵便局で郵便物受領証を提示すると謄本の閲覧ができます。その際、謄本閲覧料420円が必要です。また、郵便局長の証明文言の記載された差出人保管用の謄本を紛失したり、何らかの事情で証明文言のある謄本を再度もらいたいときは、差出郵便局で郵便物受領証明書を提示し、謄本を提出すると郵便局長名の証明文言を記載してもらうことができます。さらに配達証明として出した郵便物は、郵便物を出した後でも差出日から1年以内に限り、差出郵便局に郵便物受領証を提出すると、再度配達証明を請求することができます。

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